競技選手の競技前のマナー

 競技選手はダンス愛好家の羨望の的です。華やかな衣装を着て、しなやかな肢体からは華麗に力強さとダイナミックな動きを見せ、曲想を感じて陰と陽を表現し演じて見せる。皆が勝つために一所懸命に踊っているため、それは競技をしない人にとっては、感動であり、あこがれであり、夢を与えてくれます。
 ところが、競技選手は華やかさの裏には勝負の世界にいる多少醜い部分が見えてきます。競技選手は勝つために少しでも他よりも優位な立場で競技に挑もうとします。そこには自分だけが練習できて本番に挑もうとするエゴが見え隠れします。すべての選手がそうではありませんが、他との和、協調性と言うものが欠けた殺伐とした荒涼とした雰囲気が漂うのが試合前の状況ではないでしょうか。
 ダンスが他のスポーツ競技と違うのは、「より早く」、「より高く」などという尺度がない競技です。他との比較で動きが見られ優劣がつけられる競技なのです。優雅なダンス競技は他を思いやり自らを律してフェアな精神で試合に挑んでほしいものですね。
 ところで、最近の競技会場での競技選手のマナーは必ずしも良いものではありません。マナーはダンス教室で教えてくれないからなのでしょうか。本来ならば、教えなくても家庭環境が自然な振る舞いをさせるのですが、家族単位が小さくなり、大家族制のように年長者が戒めなくなった環境の変化がマナーの悪さにつながっているように感じています。そうでなければ競技選手を養成する教室でコーチャーが教えるべきことなのでしょうが、今はダンスの技術だけしか教えていないようです。
 気の付いたことを述べてみましょう。

1 控室
 ○ 必要以上に場所を占拠しないこと。
   シートを広げて自分の場所を確保するのですが、必要以上に広く占拠しているカップルが多いのが目に付きます。皆が狭い場所をひしめき合って利用しているのですから、譲り合いながら利用しましょう。女性の着替えは袋のようなものの中で行われるのが一番多いようです。狭い空間で肌を見せないために工夫された着替えの方法です。このような場所で着替えのためにテントを張る人がおります。着替える本人には大変便利ですが広く場所を占拠するため考えものです。ほとんどの人は自分一人が立つだけのスペースで着替えているのです。
   また、トイレの鏡の前で長々とメイクで場所を占拠している人も時々見受けられます。狭いトイレでは邪魔な存在ですね。

2 競技前の練習
 ○ かかる曲によって練習者が交替すること。
   モダンの曲がかかったらモダンの練習をすること。ラテンの選手はモダンの選手の動きを妨げないようにフロアから離れるか、又はフロアの端で練習すること。逆に、ラテンの曲がかかったら、ラテンの出場者の練習時間になります。モダンの出場者はラテンの選手の邪魔をしないようにフロアから離れるか、フロアの端で練習するように心がけてください。

 ○ フロアに立ち止まらないこと。
   フロアの上で瞑想しているのかのように「ボサー」っと立ったままの人が居ます。自分の姿勢を直しているのでしょうが、それであればフロアの上でなくても良いのです。このような人はこの上もないほど邪魔な存在なのです。フロアに立ったら立ち止まらずに動きましょう。

 ○ シャドーの人は練習を遠慮すること。
   フロアの上はカップルでの実践的な練習の場です。シャドーした上でカップルと練習できれば理想的なのですが、競技本番まで練習時間が少ないのが通常です。それに一度に沢山の人がフロアに立ち練習を始めます。このような場合はカップルの練習が優先です。シャドーをする場合は、フロアの端でカップルの邪魔にならないように練習しましょう。

 ○ スタート時、後ろに気をつけて後退しましょう。
   ホールドをしようとした男性が、女性を迎えるべく後退して二人の間に空間をつくり、ポーズして待っているのがよく見受けられます。後ろに目があればよいのですが、自分の意識の中には周囲の状況を把握しないで後退するために、進行してきたカップルに衝突するのです。狭い競技場でのホールド前の練習はなるべく後退しないようにしましょう。後退する時は自動車の運転と同じように確認してからにしてほしいものです。フロアは自分たちだけの空間ではないのです。